連載「科学日本語試論」公開のお知らせ

このたび学而図書では、戎崎俊一博士(国立研究開発法人理化学研究所 戎崎計算宇宙物理研究室 主任研究員)による新連載「科学日本語試論 を、当サイト内において公開いたします。

本連載のテーマとなる「科学技術日本語」は、英語の“Technical Writing”にあたる用語であり、主に科学技術分野での論文執筆などに用いられる日本語です。戎崎博士は、科学技術日本語を主題として取り上げる理由について、以下のように述べています。

 筆者は、大学で教鞭をとっている間、多くの大学院生を指導した。日本においては、technical writingに全く触れることなく大学院生になり、論文を書く段になって難渋する。指導教官は、学生が書いてくる文章をほとんど真っ赤になるまで添削することを嫌というほど個別に繰り返さなければならない。その大部分は、英語の文法の問題ではなく、論理の展開の手法を知らないことで発生する問題の修正だった。高校もしくは大学教養の授業で、日本語でよいからtechnical writingのエッセンスを学んでおいてくれたら、研究現場における論文指導がずっと楽になるに違いない。同様のことは、ある装置の仕様書や取り扱い説明書、特許文書を書くときにも言えるはずだ。
 本稿の目的は、Master (1986)に書かれたTechnical Writingの手法を、日本語に再構築することで科学技術日本語を確立することである。

──科学日本語試論「はじめに」より抜粋

参考文献 P. A. Master, 1986, Science, Medicine and Technology, English Grammar and Technical Writing, Pretice-Hall Inc., Eaglewood Cliffs, New Jersey 07632.

これまで英語を中心として構築されてきた科学分野における技術言語を、日本語において再構築しようとする戎崎博士の新たな試みに、ぜひご注目ください。

連載著者のご紹介

戎崎 俊一(えびすざき・としかず、理化学研究所戎崎計算宇宙物理研究室 主任研究員)
1958年山口県生まれ。大阪大学理学部物理学科を卒業後、東京大学理学系研究科天文学専攻に進学。NASA研究員、神戸大学助手、東京大学助手、同助教授を経て、1995年に理化学研究所主任研究員となり、現在に至る。天体物理学と計算科学を中心にそれらを含んだ学際研究に取り組み、分裂しすぎた諸科学の再統合を志向している。著者に『ゼミナール宇宙科学』(東京大学出版会)、訳書に『銀河の世界』(エドウィン・ハッブル著、岩波書店)、『時間・空間・重力 相対論的世界への旅』(ジョン・アーチボルト・フィーラー著、東京化学同人)、『宇宙創世記 ビッグバン・ゆらぎ・暗黒物質』(ジョセフ・シルク著、東京化学同人)などがある。