国際津波防災学会『TEN vol.3』掲載論稿のご紹介(1)

 石峯康浩(山梨県富士山科学研究所)著
「フンガトンガ・フンガハアパイ火山の2022年噴火とそれに伴う津波の概要(速報)」ご紹介

本記事では、3月25日発売の国際津波防災学会『TEN(Tsunami, Earth and Networking)vol.3』に掲載された、石峯康浩先生(山梨県富士山科学研究所)による論稿「フンガトンガ・フンガハアパイ火山の2022年噴火とそれに伴う津波の概要(速報)」を、学而図書編集部がご紹介いたします。

トンガ噴火と未知の津波

今年1月16日の午前0時15分頃、深夜の日本各地に、想定外の津波警報・注意報が発令されました。あのとき、枕元のスマートフォンや携帯電話が発する緊急速報メールの警報音に、あわてて跳び起きた方も多かったのではないでしょうか。

この想定外の津波の原因となったのが、南太平洋のトンガ王国沖合で発生した、フンガトンガ・フンガハアパイ火山の大規模噴火(いわゆる「トンガ噴火」)です。火山島フンガトンガ・フンガハアパイは、この噴火の衝撃によって陸地の大半が消失し、発生した津波は、トンガ国内に大きな被害をもたらしました。

一方、噴火後の日本国内では、若干の海面変動こそ予測されていたものの、「津波による被害の心配はない」と報道されていました。ところが、こうした予測を裏切って、従来の理論では不可解な津波が日本各地に到達し、深夜の警報発令につながったのです。

この津波が、未知の発生メカニズムによる「謎の津波」であると報道されたことは、多くの方の記憶に新しいところではないでしょうか。その後、観測された気圧変動がこの津波に関係しているという見解が広がり、この津波のメカニズムは大きな話題となりました。

ラム波による気象津波の発生など、最新情報を速報として掲載

フンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火はどういった状況のもとで発生し、どのような被害を周辺に与えたのでしょうか。また、今回の巨大噴火は、人類史上に数々の災厄をもたらしてきた「火山の冬」を、地球全体に引き起こすのでしょうか。そして、大気圧の変動が生み出す津波とは、いったいどのようなメカニズムによって発生したと分析されているのでしょうか。

石峯康浩先生による最新論文「フンガトンガ・フンガハアパイ火山の2022年噴火とそれに伴う津波の概要(速報)」は、今回の噴火の概要解説と、「謎の津波」に関する調査・分析結果を国内最速級の速報として発表し、こうした疑問に答えようとするものです。

本稿では、

1.フンガトンガ・フンガハアパイ火山形成の地質学的な背景や、近年の噴火状況の解説
2.今回の噴火が、1991年のピナツボ火山噴火以来、世界的最大規模の噴火と見なせる理由の解説と、地球気候への影響分析
3.トンガ国内における被害状況
4.噴火後の海面変動に関する、日本国内各地の潮位変化の報告と、その伝播速度から考えられる可能性
5.噴火後の大気Lamb波(ラム波)を含む微気圧変動の解析と、大気中を伝わる圧力変動が海面変動を引き起こす現象(気象津波、もしくはメテオ津波)の可能性

など、今回のトンガ噴火をとりまく事象について、広範な観点から検証と分析が加えられています。フンガトンガ・フンガハアパイ火山噴火に関する最新の研究報告を通して、防災研究の進展を図る『TEN vol.3』を、皆様この機会にぜひご一読ください。

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