このたび、好評連載中のコラム「戎崎の科学は一つ Ebisu’s United Fields of Science」(戎崎俊一 著)において、「脳の設計図を求めて ―はじめに―」が一般公開されました。

この論稿は、科学誌『TEN vol.6 脳の設計図を求めて』に掲載された、リレーエッセイ「脳の設計図を求めて」のうちの一編です。
いま、コンピュータの計算能力が向上する中、人工知能の学習手法の効率化が強く求められています。戎崎俊一博士は、「計算論的神経科学」の観点から理論を再構築した結果、人間の脳への理解の深化、さらには人工知能の学習効率化への契機となる「最適制御神経回路理論」の発見に至ったことを、この論稿で明らかにしました。
……人工知能の学習手法の効率化が、より大きな計算資源への投資とともに強く求められています。……それは、「最適制御神経回路理論」とでも名付けるべきもので、……人間の運動制御にとどまらず、深層学習や大規模言語モデルを含む人工神経回路網、すなわち人工知能一般の学習の効率化に対する数学的な枠組みを提供するものであることが分かってきました。つまり、人間の滑らかで効率的な身体操作を作り出すとともに、その回路を転用して推論や論理演算などを行う人間の脳の設計図への理解、さらには人間の脳を超えた人工知能実現への手がかりになりそうなのです。
戎崎俊一「脳の設計図を求めて ―はじめに―」
序論となる「はじめに」では、その研究の動機や、「計算論的神経科学」との出会い、「最適制御神経回路理論」の概略が語られています。
また、近日中に、続稿となる「最適制御理論による線形システムの運動制御 脳の設計図を求めて(2)」も一般公開されるほか、『TEN』上でも「脳の設計図を求めて」の連載が継続されていく予定です。AIの活用が広く議論される現在、脳の本質を深く探究し続けてきた戎崎博士による提言は、これからの人工知能研究にとって重要な知見となることでしょう。
コラム「戎崎の科学は一つ」には、地震と津波防災に関する最新の分析をはじめ、戎崎博士が「分断された科学の再統合」を目標に掲げて十数年にわたり論述し続けてきた、膨大な記事が掲載されています。その成果を集約した書籍『科学はひとつ』(戎崎俊一 著)とあわせて、多くの方にご愛読いただけましたら幸いです。